西暦2019年7月6日、ヱヴァンゲリヲン新劇場版の最新作である『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の冒頭映像が公開された。ファンにとっては待ちに待った最新情報というわけだ。
わたしは日比谷会場にて鑑賞したのだが、当日正午に会場の詳細が発表されるという異例の方式だったためか、整理券を受け取るため13時過ぎに出向いたにもかかわらず50名ほどしか集まっていなかった。前作からあまりに時間が経ちすぎているが故にファンの心も離れがちであったことは個人的にも感じていたが、まさかここまでとは。
ほとんどの人はLINE LIVEでの中継映像を観たことと思うが、会場にて大画面・大音量で視聴した身からするとぜひとも映画館で観てほしい。モニターによる発色の違いが起こっていたこともそうだが、なにより音響面でのアドバンテージが桁違いだ。
シン・エヴァ最新映像『特報2』に関する考察もどうぞ
普通にQの続編!?
鑑賞前の時点では正直なところまた意味不明な展開になるものとばかり思っていた。それこそ『Q』冒頭のようにいきなり宇宙から話が始まって状況もわからないまま戦闘、後になってよくよく聞いてみればなんと『破』から14年後の世界といったように。
そんなふうにガチのファンですら置いてきぼりにするような前科があっただけに、今回はどんなぶっ飛び展開で攻めてくるのかと心配半分期待半分だったのだ。同様の心持ちでドキドキしていた人も多かったことだろう。
それがなんと理解できてしまうのだから驚くほかない。今回の11分近い映像の中での展開を簡単にまとめると次のようになっている。
- 作戦の目的は『Q』で大破した2号機と8号機の修復に必要な予備パーツ及び弾薬類をユーロネルフ施設より回収すること
- そのためにWILLEのオペレーターと8号機(マリ)で編成されたチームがパリへ降下
- ヒトの活動を許さないL結界を解除するべく、まずはアンチLシステムの起動に取り掛かる
- その間にNERVが送り込んできた使徒もどきが複数襲来、8号機がこれらを迎え撃つ
- 敵を殲滅しアンチLシステムも無事に起動、補給作業への移行直後に映像は終了
もちろん細かな部分に関してはまだまだ不明な点が多いし、『Q』以前から謎のまま引っ張ってきた事柄に関してもわからないままだ。
とは言っても『破』から『Q』への強引かつ飛躍しすぎた繋がりっぷりを考えればなんてことはない。むしろ期待外れと言ってしまってもいいくらいだ。それほどに今回のアヴァンは『Q』から(大筋では)自然に話が進んでいたのである。
やはり始まりは彼女の歌から
『破』『Q』ともに冒頭部ではマリが登場し、戦闘中にも関わらず陽気に昭和歌謡を口ずさむという展開であった。『破』で『三百六十五歩のマーチ』、『Q』では『ひとりじゃないの』が歌われたが、『シンエヴァ』においても彼女の癖は健在のようだ。
東宝→東映→カラー→映倫の流れに合わせて聴こえてくる歌声はノイズが乗っていて、どこかレコードを思わせる響きがまたいい。この間わずか数十秒。十分に予想され得る展開ではあったのだが、いざそうなると心に響かないはずもなく「ついに新劇が帰ってきた」と感涙にむせぶのであった。
今回の選曲は『真実一路のマーチ(水前寺清子)』と『世界は二人のために(佐良直美)』の2曲である。いずれのタイトルも意味深と言わざるを得ないが、注目すべきは前述した『破』『Q』の2曲とリンクしている点だろう。
前者は『破』とのマーチ繋がりでどちらも「前向きに歩もう」という歌詞となっており、後者に関しては『Q』と合わせて「一人ではなく二人」といったメッセージ性を読み取ることができる。これらから連想されるのはやはりサブタイトルだ。
- 『世界は二人のために』&『ひとりじゃないの』= You are (not) alone.(序より)
- 『真実一路のマーチ』&『三百六十五歩のマーチ』= You can (not) advance.(破より)
彼女の歌とサブタイトルとの関連性については以前から言われていたことではあるが、ここへきて一気に真実味を帯びてきたように思う。かといってこれらがストーリーに大きく影響を及ぼすことはないだろうが、狙ってこれらの曲を選んでいることには違いない。
見慣れた赤い大地
彼女の歌声に続いて映し出されるのはエッフェル塔や凱旋門といったアイコンをはじめとするパリ市街。赤く染まっていることから考えてもフォースインパクト後ということで間違いはなさそうだ。そして空中で展開された戦艦に囲まれる形で姿を現したのは、特報で登場したあの8号機β。
凱旋門付近に直立する使徒封印用呪詛柱、そこへ降下したDSRV(深海救難艇を表す略語)より、リツコをはじめとするオペレーターたちが降り立つ。この柱はこれまでも幾度となく登場しており、これまでは使徒の力を封じる目的で使われてきたが、今回はどうやら違うらしい。
「カチコミ艦隊」と呼称される彼女らがパリへ出向いたのは、L結界を解除する"アンチLシステム"の起動作業が目的とのことだ。(『Q』で大破した2号機と8号機の修復のために、ユーロネルフが保有・管理していたエヴァの補修パーツを回収するための作業であったことが後に判明)
ここでリツコより720秒というタイムリミットが告げられる。本作の主力兵器であるエヴァンゲリオンもまた継続的な給電なしでは活動時間に限界があるなど、こういった時間制限のある緊迫した状況はもはやエヴァのお決まりと言ってもいいだろう。
このタイムリミットがどういった理由で設けられているのかという点についてだが、リツコが封印柱へ降り立つ直前の酸素や二酸化炭素濃度についての言及や「滞在可能です」とのセリフから当初は大気成分の差異によるものかと思われたがどうやらそうではないらしい。
注目すべきはDSRVの脚部で、封印柱に接触している部分から徐々に赤く変色しているのである。これは封印柱を通じて大地と繋がることでDSRVが侵食されてコア化しているものと推測される。間接的であれ大地と接触することでコア化が進んでしまうがために、早急に作業を進める必要があったということだろう。
このことと「L結界密度が予想よりも高いため作業可能時間は(予定より短い)720秒とする」といったリツコのセリフとを合わせて考えると、やはりL結界が大地のコア化と深く関連しているであろうことが改めて確認できる。
現時点ではL結界の詳細は不明だが、ヒト(リリン)が生存できない環境の原因であることは間違いない。使徒封印用呪詛柱の用途として使徒の封印に加えてアンチLシステムの発動というものも存在することから考えるに、L結界は使徒由来のものである可能性が濃厚になったと言えよう。
使徒はA.T.フィールドとは別にL結界を有しており、それが彼らの活動にも影響があるのだろう。故にそれらを解除するアンチLシステムが組み込まれた呪詛柱を用いることで使徒の活動を抑えることができると考えるのが自然だ。
カチコミチームが揃って(『Q』でアスカが着用していたプラグスーツと酷似したデザインの)スーツをまとっているのもまたこのL結界による何らかの影響を避けるためと思われる。
2014年の末に突如として公開された"until You come to me."というタイトルのショートフィルム、こちらで見られるモノもまた"接触面からコア化が進行する"という現象のためであろう。
地獄絵図のような様相を呈したインフィニティのなり損ないたち。これもまたコア化を逃れようと大地から離れるべくこのような行動に出たものと思われる。結構色々とネタは仕込まれているものだ。
ピアノ線は本当にあった
『Q』の内容でちょっとした話題になったのが戦艦の移動方法だ。実はこれらにはうっすらとワイヤーのようなものを確認することができるため、当初は「本当に吊り下げられている」「特撮好きの監督ならではのメタファーでは」といった様々な憶測が飛び交った。
実際に『Q』の映像内ではその存在がはっきりとするものの、どこから吊り下げられているものかがイマイチはっきりしていなかったため、個人的には単なるメタではないかと思っていた。
ただ『シン・エヴァ』においてはどうやらそうではないらしい。今回の映像の中ではっきりしたがあれらは本当にワイヤー(に相当する何か)を用いており、ヴンダーから吊り下げるためのものだったことが判明する。
実際マリが「長良っち、操演よろぴく」と発言していることからも作中の人物が"吊っている"ことを認識している。
※操演・・・ワイヤーアクションによる演出。CGを用いずに行う技法で特撮に多く見られる。
とはいえ『Q』ではそのヴンダーですら吊り下げられているような描写であり今回の映像とは食い違いが生じているため、『Q』の時点では単なるメタに過ぎなかったものの『シン・エヴァ』ではそこを逆に利用してやろうという思惑があったのではないかと個人的には考えている。
また本作で大幅に改修された8号機だが、こちらの外観に関しては昨年公開された特報と比べてもこれといった変更点はなさそうだ。『Q』にてフォースインパクトを引き起こした第13号機、そこからシンジを救出する際に8号機は腕を破損している。物資不足も相まってこのように半ば無理やりな改修が施されているのだろう。
腕をなくして上半身を包帯で巻かれた状態の8号機を囲うようにしてリングを配置、リング上のレールを滑らせる形で可動域の広い2本の腕が設置されている。前述のワイヤーは8号機本体に加えてこれらリングにも接続されており、機体操作の自由度が増しているものと思われる。
特に注目すべきは操作系統で、追加された腕パーツを上手く稼働させるために改善がなされている。「ヨー、ロール、ピッチ」「ようそろ」といったマリのセリフからも分かるように、空中戦闘という特性からか飛行機や船舶のような操作方法となっているらしい。コックピット正面に舵輪(船舶操縦用のハンドル)を模したソフトウェア操作ハンドルが追加されていることからも分かるだろう。
もちろんこれまで同様にコックピット脇には1対のグリップがあり、マリは今回の戦闘ではこのグリップとハンドルの2つを代わる代わる操作している。彼女の操縦と機体動作との関連を見る限りでは、どうやら従来の8号機部分(胴体∼脚。腕を除く)はグリップで操作し、新設の腕周りに関しては追加されたハンドルを回すことで操っているようだ。
8号機もまたヴンダーより吊り下げられているため、機体の方向転換や腕・機関銃の操作こそマリ自身が行っているものの、大まかな移動はヴンダー任せと思われる。とはいえ2本しかない腕で2つの操作系を同時に操るというのは至難の業で、彼女の超人っぷりがまた発揮されたと言えよう。
敵は使徒かエヴァか
今回の冒頭映像の中での最大の見どころであり最大の謎でもあるのが敵との戦闘シーンだ。44A(フォーツーエー)、44B(フォーツービー)、4444C(フォーフォーシー)と呼ばれる敵だが、マリ曰く"使徒もどき"とのこと。その見た目から"使徒の面をかぶったエヴァ"と言ってもいいだろう。
各名称や外見の特徴、冬月(NERV)からの刺客であることを表すリツコのセリフからもわかるように、恐らくはMark.04(もしくは4号機)と何かしらの関係がありそうだ。ただしその実態は謎に包まれている。
またこれらのネーミング方法だが、建造する際に必要なエヴァの機体の数だけ"4"を並べて末尾にアルファベットを追加しているものと考えられる。44Aと44Bはエヴァ2機をくっつけているので4が2つ、4444Cは4機使っているので4を4つといった具合だ。
アルファベットに関しては、ABCと4という組み合わせからもやはりMark.04が連想されるだろう。『Q』の冒頭で登場したMark.04だが、その形状の違いからコード4A、コード4B、コード4Cが存在した。単純に考えればこれら3種のMark.04と何かしら共通するという点で今回のエヴァ(使徒?)にも同様のアルファベットが割り当てられていそうだが、外見や能力といったものは似ても似つかないため現時点では謎のままである。
44A
初めに登場する44Aは”航空特化タイプ”という名称からもわかるように、飛行を目的としたもののようだ。正面に縛り付けられた使徒の面や中心を貫くロンギヌスの槍、Mark.04を思わせる形状のローターなどツッコミどころはたくさんあるが、詰め込み過ぎな感は否めない。
さらに詳しく見ていくと、どうやら首の無いエヴァを向かい合わせに貼り合わせたような造りであることがわかる。大の字状態の2機を腹どうしが合わさるようにしてくっつけ、腕と脚の先にローターパーツを追加しているようだ。
量産されたであろう機体と、それぞれに割り当てられたロンギヌスの槍とくれば旧劇場版での量産機が真っ先に思い浮かぶ。旧劇のような展開を想起させるには十分なネタではあるが、あくまでヒントでしかなく結局のところは明確なことはなにもわからない。それがエヴァってものだ。
A.T.フィールドを有してはいるものの、遠距離からの機関銃でいとも簡単に破壊できてしまう。最終的には8号機によってまとめて破壊されてしまうわけだが、正直なところこの殲滅方法には疑問が残る。
それまで一定の陣形を保っていた44Aがどういった理屈で一気に8号機のもとへ集まることになったのか。何十機とある44Aをどうやってくっつけて放り投げたのか。なぜ放り投げた程度で殲滅できたのか。それなら最初からそうすればよかったのでは。モヤモヤが消えないままだ。
結局44Aは主力部隊ではなかったことが判明するのだが、このあっけないやられっぷりからしてもやはり単なるおとり要員であったことがうかがえる。ロンギヌスの槍があるならどうにかして使えよと思ったのはわたしだけではないはず。
4444C
巨大な陽電子砲をメインとしてとそれを神輿のようにして担いで支える4体のエヴァ、さらにその下にはうねうねとしたミミズのような何かが蠢いていてこれまた謎だらけの機体だ。
青色だった44Aとは打って変わってこれらはカーキ色の機体が採用されている。この発色を見て誰もがあの映像を思い浮かべたことと思う。そう、『Q』のラストに流れたシンエヴァ予告である。
全く同じ形状の機体が複数存在し、カラーリングも酷似している。予告詐欺が常態化していた新劇場版にあって「予告通りに話が進むかもしれない」というのは朗報である。予告ではMark.06に似た頭部であったことなど相違点は見られるがこれは期待できそうだ。
44Aと共通する点として、こちらにも使徒の面が取り付けられていることが挙げられる。取付方法が雑なところまで似た仕上がりとなっており、44Aはひもで縛られているだけで4444Cは針金のようなもので吊るす仕組みだ。戦闘中に首が飛んだMark.09と同様に機体そのものには首から上がなく、そこに面を後付けしただけのような造りになっている。
44B
44Bは4444Cに電力を供給することを目的とした機体だ。メインとなる電力発生装置の両サイドに移動機構としてエヴァの肩から下の部分を2体組み合わせているが、これはわざわざエヴァを転用する必要があったのか。バランスが悪そうで見ていてちょっと心配になる設計だ。2人の足並みが揃わなくてよろけるところが目に浮かぶ。
それはいいとして、こちらは特に戦闘機能は備わっておらず純粋に電力供給のためだけに建設されたもののようだ。陽電子砲を撃つにあたって蓄電・放電を行うわけだが、本体である4444Cへの供給は電線を用いておらず、稲妻のようにして空気中を伝っているように見える。14年も経てば進化するというものだ。
追記 2019/07/23
今回登場した機体に関して、カラースタッフ及び山下いくと氏がTwitterにてその設定画や原案を掲載していたので引用させていただく。こちらも併せて確認してみるとまた新たな発見があるかもしれない。
#シン・エヴァンゲリオン劇場版 #エヴァ #エヴァンゲリオン #44A pic.twitter.com/zElvUQM7tM
— (株)カラー 2号機 (@khara_inc2) July 23, 2019
#シン・エヴァンゲリオン劇場版 #エヴァ #エヴァンゲリオン #4444C pic.twitter.com/HLlIffWmue
— (株)カラー 2号機 (@khara_inc2) July 23, 2019
で、2017年三度目の正直でやっとグルグル回る足ができることと相成り、それが4444です。まだ名前がマーク4砲台型。基本私はここでデザインの手を離し、渭原敏明さんとCG部に後バージョンアップをお任せ、皆さんご覧になったアバンで登場するあの姿に仕上がりました#シン・エヴァンゲリオン劇場版 pic.twitter.com/6BhkzwhoXD
— 山下いくと@エヴァンゲリオンANIMA全5巻 (@ikuto_yamashita) July 23, 2019
ちなみにコアしかないエヴァ旧7号機のアイデアには過去にこんなものもあり、それも当時「キモくていい」と庵野監督お気に入りだったので、今回4444の給電担当44として登場。(もう名前がこんがらがってる)例によって私はここで手を離して渭原さんらに詰めを預けます。#シン・エヴァンゲリオン劇場版 pic.twitter.com/FqfRFrM3z4
— 山下いくと@エヴァンゲリオンANIMA全5巻 (@ikuto_yamashita) July 23, 2019
特に重要なのは山下氏が掲載した原案だろう。これらは4444Cと44Bに関するものだが、その内容から
- 当初両機は7号機として登場予定であった
- その後4444Cはマーク4陸戦砲台型という仮名称に変更
- 2017年の原案では4444Cに"使徒の面"がなかった
個人的に気に入ったのは44B原案の隅に書かれた「ちなみに3体以上で支えるとおみこしみたいになってしまう」というものだ。ここでの発想が恐らく4444Cに採用されて、あのおみこし砲台となるに至ったのであろう。こういった裏話というのもまた見ていて(聞いていて)非常に興味深い。
ヤシマ作戦を思わせる戦闘
4444Cとの戦闘を見て『序』のヤシマ作戦を思い出した人も多いことだろう。陽電子砲による攻撃とそれを防ぐ形でのシールド展開というのはまさしくあの第6の使徒との戦闘そのものだ。艦船の底部に取り付けられているシールド状のものは『序』で零号機が用いたものに酷似しており、制作サイドも多少なりとも意識しているのは確かだ。
ただ今回はミサトらが砲撃を受ける形となっており、その点では『序』とは明確に異なる展開が繰り広げられている。ただ一見すると立場が入れ替わっているようにも思えるのだが、"NERV側が陽電子砲を用いて敵(今回はWILLE)を迎え撃つ"という構図に関してはむしろ変化がないとも言える。
『Q』以後は主にWILLEが正義であるかのような視点で描かれてはいるものの、一応はNERVとしても何かしらの信念のもとに活動を続けているということらしいのだから、どちらが正しいのかは今後の展開次第といったところだろう。
そんな陽電子砲による攻撃だが、8つある艦船を重ねたうえでさらに8号機も加わることで防御に成功する。防御用途として砲撃を受けた艦船がぶっ飛んでエッフェル塔が中ほどでぽっきりと折れてしまうなど、街がめちゃくなちゃになったほどの強烈な一撃だ。
パリの象徴を犠牲になんとか砲撃を防ぎきったWILLEだが、第二射が思った以上に早かったらしく緊迫した状況となる。ここで8号機が出番とばかりに先ほど折れたエッフェル塔の先端部分を脇に抱えて突進、A.T.フィールドに無理やりねじ込んで無事に殲滅するのだが、これにはさすがに笑ってしまった。
実はこのアヴァン放映の直前にフランスでのジャパンエキスポの様子が中継されており、そこで庵野監督が(ビデオメッセージで)登場し「過去の作品でも登場させるほどエッフェル塔が大好き」「(エッフェル塔を)なるべくきちんと描こうと思い、それが叶った」というコメントを残していたのだ(動画4:47~)
にもかかわらず、その思い入れのあるエッフェル塔を特にこれといって重要でもない場面でいともたやすくぶち壊し、あろうことかその折れた先端を敵に突き立てて粉砕する形で敵を殲滅するという暴挙に出たのだからこれはもう笑うしかない。この大仰なまでの破壊劇はやはり監督の特撮魂からくるものなのであろう。
シンエヴァは新たなるステージへ
無事に4444Cを殲滅したところで残り時間は30秒。最終フェーズを終えてアンチLシステムの起動に成功する。あの赤い文様が浮かび上がった封印柱を中心として街がかつての色を取り戻していく。と同時にユーロネルフ施設の復旧を開始、お馴染みのギミックで地面から武装されたビルやパーツ保管庫といったものが姿を現す。
物資回収のために降下を始めるWILLEと、DSRVをそれを取り囲むようにそびえたつエヴァパーツ格納庫。格納庫の表示や中身といったものは思わせぶりなものばかりだ。特に面白いのが"JA-02"だろう。名前はもちろんながら形状もまたあのTV版で登場したJ.A.(ジェットアローン)と非常に似ており、『シン・エヴァ』ではその改良版でも出てくるのかと少し興奮してしまう。
しかもこのJA-02用の格納庫が複数あるのだからびっくりだ。この演出が単なるファンサービスなのかその後の本編への伏線なのかはさておき、いくつもパーツを用意しているということはつまりユーロNERVとしては割と真面目にJA-02を実戦投入するつもりでいたことがまた面白い。
また「ニコイチ型2号機の新造とオーバーラッピング対応型8号機への改造ができる」というマリのセリフからも分かる通り、予告で登場した8+2号機のがシンエヴァで登場する可能性が非常に高いことが推測できる。こののち2号機と8号機をくっつけることで新たなエヴァとして運用していくことになるのかもしれない。
そしてこれらの思わせぶりなパーツ群を背に腕組み&仁王立ちの通称"ガイナ立ち"を見せつけるマリ。「待ってなよ。ワンコくん」という彼女のセリフで本映像は幕を閉じる。
10分超もの冒頭映像を公開するという異例の展開ではあったが、ファンを沸かせるには上々の出来であったことは疑いようがない。初めに書いたように(ある程度エヴァを理解している人であれば)置いてきぼりを喰らうこともないし、今後の展開を期待させるには余りあるほどのネタを詰め込んでくれたわけだ。
余談
個人的な話になってしまい申し訳ないのだが、実はわたしは青葉シゲルが大好きだ。いわゆるオペレーター三人衆の一人(残りはマヤと日向)に挙げられるのだが、彼だけが際立って扱いが適当で名前すら呼んでもらえなかったりとTV版や旧劇での報われなさがなんともツボで非常に気に入っている。
そんな日陰者の彼がなんとシンエヴァでの最初のセリフを手にしたのだから喜ぶしかない。マリの歌で始まる配給会社のロゴ、その後映し出されるエッフェル塔のカットでいきなり彼の声である。
顔こそ出てはいないがそんなことは関係ない。彼の安否が確認できただけでも儲けもの、それどころかセリフ第一号だ。感無量。本当にそれだけだ。あまりに個人的すぎて共感は得られまいがここに書かせてもらう。
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